歯の神経を守り、歯の寿命を延ばすために

虫歯が進行して歯髄（神経）にまで達した場合、これまでは神経を取り除く「抜髄」が主流でした。しかし、歯髄を失った歯はもろくなり、破折や再治療のリスクが高まります。
当院では、可能な限り歯の神経を残す「歯髄保存療法」を導入しています。歯の寿命を延ばすだけでなく、外観や機能の面でも優れた治療です。

歯髄保存療法について

歯髄とは、歯の内部にある血管や神経が集まった組織で、歯に栄養を供給し、健康を維持する重要な役割を担っています。
歯髄保存療法は、進行した虫歯や外傷で歯髄が侵されそうな場合でも、可能な限り神経を残すために行う処置です。感染部位だけを除去し、MTAセメントなどの材料で封鎖することで、神経の保存を図ります。

歯髄を残す理由について

当院で行う主な歯髄保存療法

症状や進行度に応じて、以下のような治療法を選択します。

間接覆髄治療

歯髄に近接しているが、まだ露出していない虫歯に対して行います。虫歯の一部をあえて残し、薬剤で封鎖して自然な象牙質の再生を促します。

• 治療回数：1〜3回
• 期間：3〜6ヶ月
• メリット：歯髄保存・根管治療回避・切削量を最小限に
• デメリット：再感染リスク・自費診療・適応症例に限りあり

シールドレストレーション

虫歯を完全に除去せず、「栄養を遮断することで虫歯の進行を止める」理論に基づいた処置です。削る量が最も少なく、患者様への心理的負担も軽減します。

• 治療回数：1〜3回
• 期間：約1ヶ月
• メリット：低侵襲・歯髄保存・切削量を抑えられる
• デメリット：自費診療・すべての症例に適応不可

ステップワイズエキスカベーション

虫歯を段階的に削り、象牙質が自然修復する時間を与えながら最終的に健全歯質に置き換える方法です。

• 治療回数：1〜3回
• 期間：3〜6ヶ月
• メリット：歯髄保存・切削量の削減・治療後の安定性
• デメリット：自費診療・長期管理が必要・適応制限あり

直接覆髄治療（MTA覆髄）

削ったことで歯髄が露出した際、MTAセメントを用いて直接歯髄を保護する治療です。従来の水酸化カルシウムよりも封鎖性・成功率が高く、当院でも積極的に導入しています。

• 治療回数：1〜3回
• 期間：約1ヶ月
• メリット：露出歯髄の保護・根管治療回避・成功率が高い
• デメリット：自費診療・アレルギーの可能性・症例により適応不可

部分断髄法

感染が歯髄全体ではなく一部に限局している場合、感染部位のみを取り除いて健康な神経を残します。近年注目されている保存療法の一つです。

• 治療回数：1〜3回
• 期間：約1ヶ月
• メリット：歯髄保存・機能温存・歯の寿命延長
• デメリット：自費診療・薬剤アレルギーの可能性・症例により非適応

歯頚部断髄法

歯髄の深部にまで感染が及んでいる場合に選択される方法です。根管口付近まで感染歯髄を除去し、MTAなどで封鎖することで神経を部分的に残します。

• 治療回数：1〜3回
• 期間：約1ヶ月
• メリット：深部感染への対応・歯髄の一部保存・根管治療の回避
• デメリット：自費診療・アレルギーの可能性・適応症例に制限がある

MTAセメントとは？

MTA（Mineral Trioxide Aggregate）セメントは、1990年代にアメリカで開発されたケイ酸カルシウム系の歯科用薬剤です。高い封鎖性と生体親和性を兼ね備えており、象牙質の再生促進や炎症抑制効果も認められています。当院では、歯髄保存療法の要となる薬剤として積極的に採用しています。

万が一、歯髄を残せなかった場合は

残念ながら歯髄の保存が困難なケースでは、抜髄処置を行い、精密な「根管治療」へと進みます。治療後は、衛生状態の維持とともに、耐久性と審美性に優れた修復処置を通じて、歯の長期保存をめざします。

費用について（自由診療）

治療法	費用（税込）
歯髄保存療法（各種）	¥44,000〜
歯の修復費用（つめもの・かぶせもの）	¥55,000〜¥154,000

※治療内容や使用材料により費用が異なります。詳細はカウンセリング時にご説明いたします。

歯を守るために、まずはご相談ください

歯髄保存療法は、できる限り「削らない」「抜かない」歯科治療を目指す、未来志向の治療法です。虫歯が深く進行してしまっても、まだ歯を守れる可能性があります。
痛みが出たときはもちろん、違和感を感じたときには、なるべく早めにご相談ください。天然歯を長く大切にできる治療をご提案いたします。